メインプログラム・アーティスト村上 隆Takashi Murakami
<アーティストコメント>
六本木アートナイトは、都合3回、スケジュールを変えました。
コロナ禍が発生した直後と、東京都への緊急事態宣言発令による2回。
今回が4回目の正直となる訳ですけれども、いよいよ、2年半の時を経て、私、村上隆によるキュレーションで『ドラえもん』と、13名のアーチスト達とのコラボレーションをしたバルーンの展示が行われます。
コロナ禍は、在宅で行き場のないモヤモヤを抱えた人々を大量に生み出し、全世界的に、ゲームやネットへの依存を助長させました。その流れで、日本のコンテンツ、特に漫画やアニメに触れる機会が格段に増え、理解も深まったと思います。
中でも『ドラえもん』は、日本とアジアにおいて、とても重要なコンテンツです。主人公がイケてなくて、モジモジしていて、それを助ける耳の無いネコ型ロボットがいて、しかし、そのモジモジ君の問題が解決されることはない。けれども、取り敢えず、笑って生きていこう…。そういう、この作品の持つ、ある意味〝ドリームズカムトゥルー”と真逆の人生哲学が、いま、アジアの人々の心により強く沁み込んでいるのではないか。
言うなれば、『ドラえもん』はアメリカのミッキーマウス的な、アジアのアイコン的なキャラクターです。ゆえに、僕も日本の象徴として、これまでもコラボレーションさせて頂いてきましたが、今回は、13名のアーチストに声を掛けて、『ドラえもん』と日本人アーチストのコラボレーションを、さらに展開してみました。
ARでの体験も、できたら何箇所か用意したいなあ、と考えていたりします。とにかく、是非とも、楽しんでください。
<プロフィール>
1962年、東京生まれ。
日本の伝統絵画と現代美術の源流をアニメ・マンガの視覚論を通して再構想する「スーパーフラット」論を提唱。 Miss Ko²とDOB君など、おたく文化を反映したキャラクターを多く生み出し、 キッチュ性の高い彫刻作品と西洋の透視図を対極とする超二次元的な絵画を発表している。
村上のサブカルチャーを基盤とする文化論は、高級/低俗のヒエラルキーを解体するだけでなく、 戦後日本人の心理を批評的に描き出し、グローバル化が進むアート・シーンに日本固有の言説を確立した。 また、ルイ・ヴィトンや、カニエウエスト、ドレイクらとのコラボレーションや、ストリートファッションと現代陶芸に着目した活動を通して、 現代美術の垣根を超えた観客層を世界中で獲得し続けている。
自身が企画した「スーパーフラット三部作」の最終章「リトルボーイ」展(ニューヨーク、2005年)は、 全米批評家連盟によるベストキュレーション賞に輝く。 初の回顧展『©MURAKAMI』(2007-2009年)はロサンゼルス現代美術館を含む欧米4都市を巡回。 ヴェルサイユ宮殿(2010年)、アルリワク展示場(ドーハ、2012年)、森美術館(2015年) ガラージ現代美術館(モスクワ、2017年)、大館(香港、2019年)など、世界中で個展を開催している。
近年はNFTに参入し、「Murakami.Flowers」や、RTFKTとのコラボレーション作品「CLONE X」を発表。The Webby Awardsでは特別功労賞を受賞した。先ごろ、デジタルと現実の2つの世界をテーマにした展覧会「An Arrow through History」をNYのガゴシアンギャラリーで開催した。