クリエイティブディレクター紹介

六本木アートナイト2010、クリエイティブディレクションに迫る!

北川一成氏
写真:新津保建秀

「六本木アートナイト2010」の開催が目前に迫り、六本木の街中でチラシやポスターを目にする機会が多くなってきました。 鮮やかなブルー地に、椿昇氏の《ビフォア・フラワー》をはじめとしたアート作品がちりばめられたビジュアル。みなさん、もう手に入れましたか? 開催まで残り1週間となり、各施設では全プログラムを網羅したガイドブックを配布中です! 強烈なインパクトを与えるこれらのツールのクリエイティブディレクションを担当したのは、クリエイティブ集団GRAPH。ヘッドデザイナーを務める北川一成氏に突撃インタビューを敢行しました!

―― 今回のチラシやポスター、かなりインパクト大ですね。

  • 北川 各施設でラックに差し込まれて配布されていると思いますが、目立つでしょう。よかった(笑)。

―― webやtwitterなどでは、「インパクトにびっくりした!」とか「このデザインはなんだ!?」といった反響があるようです。

  • 北川 コミックの表紙の題字のようだと言われたり、よくある折り込みチラシのようだとも。そうして話題になったり議論が起きたりしたことは、非常によかったと思っています。議論が起きないデザインほど寂しいものはありません。デザイナー仲間や先輩の間でも議論を呼んだりしたらしい(笑)。

―― このデザインには、どんな意図があったのですか?

  • 北川 六本木アートナイトは昨年の実績でいうとのべ55万人を動員したイベントです。アートに興味のある層やグラフィックデザインが好きな層だけを集めても、55万人には到底及ばないと思うんです。つまり、普段はアートに特別興味がなかったり、アートやデザインは敷居が高いんじゃないかと思っている人たちが、六本木を舞台にオールナイトで繰り広げられるお祭りを楽しみにやって来た、という事実がある。そういった人たち皆に響くためには、こうしたコミュニケーションツールがどうあるべきか? このテーマに真剣に対峙しました。

―― 六本木の一等地で配られたり掲示されるものとしては、かなり異質というか、イメージを裏切るデザインだったのではないですか? それはもしかして・・・狙い?

  • 北川 意識のズレやミスがあるほうが興味関心を誘発しやすく、それは狙いとして当然ありますが。というか、スタイリッシュでソリッドで今っぽい、シャレたものだけがデザインなんだという概念や意識には、つねづね疑問を持っています。

―― スタイリッシュなデザインだけが万能ではないと。

  • 北川 たとえば自分は兵庫県の加西市出身で、両親はそこに暮らしているんですが、彼らを東京のオシャレな場所に連れて行くと緊張して固まってしまうんです。スタイリッシュなワインバーもいいけれど、俺は赤ちょうちんの方が落ち着くんだという人もいますよね。だから全部が全部をスタイリッシュに整えることだけが、デザインの役割ではないはずです。今回の場合は、年齢も性別も実に多様な55万人ものお客さんに来ていただくイベントなので、その対峙の仕方を考えた結果、こうしたデザインにしました。

―― アートやデザインのコア層ではない人の心にも響くデザイン?

  • 北川 コミュニケーションツールの目的は、いかに人に響くか、にあると思うんです。なんだか楽しそうとか、なんだこれ不思議とか、好きじゃないのについ惹かれてしまう、とか。そういう意味では、webやtwitterで話題になるというのは、人の心に引っかかることができたのかもしれないと、嬉しく感じています。デザインにはそれぞれデザイナーの意図があるものですが、この意図とは別に、それを見た人が違う意味を感じてもいいはずです。見た人がそれぞれの身体感覚に忠実に反応し、多様な解釈をして頂ければと思っています。

昨年末にギンザ・グラフィック・ギャラリーで行われた個展「北川一成」において発売された作品集の冒頭で、永井一正氏がこうコメントを寄せています。
「北川一成のデザインは危ういバランスを保った不思議なデザインであったりする。そしてそう思った時には完全に北川の術中に嵌ってしまっている」。
今回のデザインも、おや?と思ったら最後、すでにそこはGRAPHデザインの"術中"の内、なのかもしれません。

文 山内美貴(AMu.)

GRAPH(グラフ)

北川一成をヘッドデザイナーに据え、「デザイン×プリンティング」を標榜して質の高い表現を繰り出すクリエイティブ集団。最近ではウェブや映像などと連動し、見る人にインタラクティブに働きかける作品も多く手掛ける。3月23日~5月12日まで、大阪のdddギャラリーにて第173回企画展「北川一成」を開催。(http://www.dnp.co.jp/gallery/ddd/schedule/d173.html)GRAPHの企業理念、ブランド戦略の考え方をまとめた書籍、『ブランドは根性』が日経BP社より発売中。
www.moshi-moshi.jp

<GRAPH 作品>

白イ烏/ロゴマーク
京都市が進める着物のアンテナショプ「白イ烏」のロゴマークをデザイン。ネーミングから考案した。古来より高貴とされる白い動物と、八咫烏で知られるように神聖な動物といわれる烏。正反対のイメージのものを組み合わせた
月の桂/マーク
延宝3年(1675年)創業の、京都・伏見で最も古い酒蔵「増田徳兵衛商店」のマーク。増田家の母屋の屋根や公家の装束、月のうさぎなど、月の桂の由緒正しき歴史からインスピレーションを得た
東京もっと元気に/ポスター
不況マインドを払拭し、人と街が元気になるためのアイデアやイベント等の提案・実施を行うプロジェクト。見た人が思わず笑顔になってしまうような微笑みのロゴマークをデザイン
渋谷区講演会チラシ
渋谷区が主催する文化講演会では、自らの会のチラシデザインを担当。貼られる場所やチラシを見る人の気配を考え、かっこつけすぎないデザインに。実際に多くの人が訪れた

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